ハイキュー 影山 声。 ハイキュー387話ネタバレ!影山飛雄の過去判明!最強の敵は日向翔陽!|ワンピース鬼滅の刃ネタバレ考察ガジライフ

「ハイキュー!!」試合中に声を荒げる影山に日向は…第7話先行カット

ハイキュー 影山 声

TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』より、2月21日(金)から放送開始される第7話「返還」のあらすじと先行カットが到着した。 TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』キービジュアル 原作は、古舘春一が「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載し、コミックス累計3,500万部突破を誇る次世代王道スポーツコミック。 主人公・日向翔陽と影山飛雄をはじめとする烏野高校男子バレー部のメンバーが、日本一を目指して成長していく姿が描かれる。 第7話では、引き続き伊達工業高校との練習試合が続くが、烏野は伊達工の県内トップレベルのブロックに苦戦。 TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第7話「返還」先行カット その中で、影山がなかなか攻撃を決められないスパイカーに声を荒げる。 日向はそんな影山に対して……。 TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第7話「返還」先行カット TVアニメ『ハイキュー!! TVアニメ『ハイキュー!! 第2クールは7月より放送開始。 <STAFF> 原作:古舘春一(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中) 監督:佐藤雅子 副監督:石川真理子 シリーズ構成:岸本卓 キャラクターデザイン:岸田隆宏 プロップデザイン:米川麻衣 総作画監督:小林祐 アクション作画監督:高橋英樹 美術監督・設定:立田一郎[スタジオ風雅] 色彩設計:佐藤真由美 色彩設計補佐:有澤法子 撮影監督:中田祐美子 撮影監督補佐:福井千耀 3D:岩崎浩平[V-sign] 2Dワークス:濱中亜希子 特殊効果:星美弥子 編集:植松淳一 音響監督:菊田浩巳 音楽:林ゆうき・橘麻美 制作:Production I. G <CAST> 日向 翔陽…村瀬 歩 影山 飛雄…石川 界人 澤村 大地…日野 聡 菅原 孝支…入野 自由 田中 龍之介…林 勇 東峰 旭…細谷 佳正 西谷 夕…岡本 信彦 月島 蛍…内山 昂輝 山口 忠…斉藤 壮馬 縁下 力…増田 俊樹 清水 潔子…名塚 佳織 谷地 仁花…諸星 すみれ 武田 一鉄…神谷 浩史 烏養 繋心…江川 央生 星海 光来…花江夏樹 宮 侑…宮野真守 (C)古舘春一/集英社・「ハイキュー!! 」製作委員会・MBS 《宮崎二郎》.

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#ハイキュー!! #月島蛍 心の声が聞こえる影山くんの話

ハイキュー 影山 声

「いい影山。 君が聞こえてるのは人の"心の声"だ」 ある日心の声が聞こえるようになってしまった影山くんと、月島くんのお話。 心の声が聞こえるようになった原因。 未知数な能力。 変な夢。 謎は増えていく中、ちょっとずつ距離を縮めていく二人。 そんな特殊設定ありきの小説です。 窓を閉めるって表現は昔観てたドラマから。 とっても表しやすい表現でした・・!! 設定等は全て考えた捏造です。 真っ白な空間。 そこには自分の他にも人間らしきものがいる。 誰かはわからない。 「おい、ここはどこだ?」 ぼんやりとしたシルエットの真っ黒な背中に語りかけるが、返事はない。 「アンタは・・」 「・・・やま!かげやまくーん!!」 「ん・・」 「やっと起きた!大丈夫かー?」 「日向・・?」 朦朧とした意識の中見えたのは、癖のあるオレンジ色の髪。 なんだ、今のは夢かと目を擦る。 「ごめんね影山、無理に起こすなって言ったんだけどさ」 そう申し訳なさそうに笑う山口に首を傾げる。 「影山、練習中に頭打ったんだよ。 それで脳震盪起こして病院に運ばれたんだ」 「あー・・、そういえば」 いつものように日向と速攻のタイミングの練習をしていた時のことだ。 頭上に上がるボールにばかり気をとられて足元をよくみていなかった。 蒸し暑い体育館では当然汗もかくもので、床にしたたり落ちた汗に滑って盛大にこけたのだ。 山口の話ではどうも俺は打ち所が悪かったらしく、気を失った俺にパニクった武田先生が救急車を呼んでそのまま救急搬送されたらしい。 そして今に至るわけで、部活後に心配した一年生三人が来てくれたのだ。 「特に異常はないみたいで良かったね!はやく元気になってね」 「おう」 それじゃあ俺達はこれで。 早くトスくれよー!!と大声で騒ぐ日向に月島が一喝いれ、三人は帰っていった。 事が事だっただけにとんとん拍子に検査も終わり、あっという間に退院できた。 今日からまた学校な訳だが、やけに辺りは騒がしい。 休み時間はもちろんのこと、授業中も、放課後も、ひっきりなしに声が飛び交っているのだ。 「影山 もう大丈夫なの?」 待ちに待った部活の時間。 アップを終えた菅原が影山を気遣う。 「うす。 ご迷惑おかけしました!!」 「気ぃつけろよ~怪我して試合出れないとかお前も嫌だべ~?」 まぁ無事でなにより。 そう言って菅原はニカッと笑った。 「そういえば今日どこも騒がしいっすね」 「そう?いつもと変わらないと思うけど・・久々に来たから、そう感じるんじゃない?」 「・・そッスね」 それにしたって騒がしすぎやしないかといまいち腑に落ちなかった影山だが、菅原の言葉にも一理ある。 きっとそうだろうと自分に言い聞かせ練習に戻った。 AチームとBチームに分かれて形式練習をする。 久々の練習で影山もいつも以上に気合が入っていた。 「ホギャ!」 「おい日向!!もっと腰落とせって何度言ったらわかんだよこんのボゲエ!!」 「うう゛・・」 レシーブミスをした日向にすかさず影山が怒鳴る。 「(影山のヤツ・・いつか絶対けちょんけちょんにしてやっからな!!)」 「あ゛!?」 「ひい!!」 「俺を倒したかったらまずそのクソみたいなレシーブなんとかしろ!!」 「な、んなな、なんだよバカ!わかってっし!!エスパーかよ!!」 「・・・・」 「?どうしたのツッキー?」 「・・いや」 それからも試合は続いていき、両チームとも一歩も引かない戦いとなっていた。 「おい!!」 「・・なに」 「囮だってわかっててもちゃんと全力で入ってこいよ!!」 「・・はいはい、わかったよ」 手を抜いて飛んだ月島に影山が怒る。 今のは月島が引き下がったからまだいい方で、酷いときには両者譲らず澤村や田中の仲裁が入る。 「(だって今のはレフトにあがるってバレバレだったデショ。 無駄な体力使いたくないんだけど)」 「おい、無駄ってなんだよ!!」 月島のゼッケンの胸倉を掴みあげて、影山が怒鳴る。 月島は驚いたように目を丸くしただけで、いつものように何か言い返してはこない。 熱くなった頭ながらにきっと誰か止めに入ってくるんだろうなと思ったが、その考えに反して辺りはシーーンと静まりかえっていた。 「お、おい!影山!なに言ってんだよ!!」 「だってコイツが・・」 「今月島・・何も言ってねーべ?」 え、 周りを見渡せばみんな眉を顰めている。 心配して向けられるその視線がなにやら異様なものを見ているかのような目に感じて気持ち悪くなる。 「(一体どうしたんだ影山・・調子でも悪いのか?)」 「(月島、なんか言ってたのかな・・)」 「(あああ!!ツッキー!!)」 声は聞こえるのに口が動いていない。 これは・・心の声なのか? 脳に直接響き渡るように聞こえてくる声にパニックになる。 「・・・頭冷やしてきます」 「ちょ、影山!何処行くんだよ!」 遠くなっていく菅原の声を無視して、近くの水道まで走る。 俺は心の声が聞こえるようになってしまったのか?なんで?あの時頭を打ったから? 「王様」 後ろから投げかけられた声は、さっき自分が喧嘩をふっかけてしまった相手だ。 「・・王様ってよぶんじゃねえ」 「やっぱりね」 何がだよ、とくるりと体の向きを変えて向き直る。 「今僕、声に出して君のこと呼んでない」 背筋が凍る。 口をぱくぱくとして言葉を探すがでてこない。 「君・・聞こえてるよね?」 [newpage] 月島に言っていいものか、なにより自分が1番この状況をわかってない。 変に思われたんじゃないか。 「(クソッ・・!情報が足りねえ・・!)」 「別に隠さなくてもいいよ。 月島の物言いは何か知っているようだった。 「・・何か知ってるのか」 「さあねーまあ君よりは?」 「・・お前の知ってること、おしえろ」 「教えてください月島さんって言えたら教えてあげてもいいけど」 「あ゛?!」 「冗談だって。 最初からそのつもりだよ。 今君相当不憫だし」 けろっと軽やかに影山をからかう月島。 そんな月島に影山もむっと口を尖らせる。 「まあ今ここで話すには長くなるから、とりあえず部活が終わるまでは我慢しなよね」 一緒に戻ると変に思われるだろうから、君はもう少し後に来なよ。 そう言い残して月島は体育館のほうに歩きだした。 「月島」 心底面倒くさそうに振り返る月島。 そんな彼に、口をもぞもぞさせながら言葉を紡ぐ。 「・・さっきは、悪かった」 月島は驚いたように目を見開き 君が素直だと調子狂うとだけ悪態をついて戻っていった。 「さっきはすんませんした!!頭冷やしてきました」 ちょっと間を空けてから体育館に戻った影山は扉の前に着くと同時に思い切り頭を下げる。 みんな突然訳のわからないことを言った自分を気味悪がっているかと心配していたが、おーおかえりーなんて朗らかに迎えられ、影山の心配は杞憂に終わった。 「月島」 「あぁ、そうだった」 あれから何事もなく部活は終わり、みんな部室で帰り支度をする。 エナメルの鞄を肩にかけ、影山は月島に声をかけた。 そう、月島には聞きたいことが沢山あるのだ。 「ツッキー!帰ろー!!」 「ごめん山口。 僕今日寄るところあるから先帰っていいよ」 「そう?あぁ、駅前のCDショップ?そういえばこないだ行きたいって言ってたもんね。 俺も一緒行っていい?」 「今日は・・影山と話があるから」 「え・・」 その月島の言葉に山口だけでなく部室にいた全員が反応した。 今日あんなことがあったのだ。 不信に思っても可笑しくない。 「・・別にみなさんが考えてるようなことじゃありませんよ。 本当にちょっと寄るところがあるだけです」 「そ、そうか」 「気ぃつけて帰れよー!」 ぎこちない空気の中、二人は部室を後にした。 てゆーか、俺と月島が二人きりってそんなに心配か 「どっか入ろうか」 「おう」 赤い看板がトレードマークのチェーン店。 適当に空いている席を探し、二人は隅の二人席に腰をおろした。 「よくそんな食べれるね」 「お前はそれで腹減んないのか」 影山が頼んだのはビックワックにポテトとナゲットのセット。 一方月島はチーズバーガーとバニラシェイクを頼んでいた。 細身なのが納得できるぐらい彼は少食で、いつか折れちまうぞ。 なんてどうしようもないことを考えた。 「・・さて、と。 君に話す約束だったしね。 僕が知ってることは話すよ」 部活後の空腹感を埋めるかのようにそれぞれ食事を済ませ、ちょくちょく会話を交えひとしきりした時である。 ズッと音を立ててシェイクを飲み終えたらしい月島が会話を切りだした。 「いい影山。 実際に発せられるのとはまた別の声。 人が考えてることがよめるって言ってもいいかな」 「そんな・・なんで急に・・!」 「恐らく・・この間の脳震盪が原因じゃない?」 やっぱりか。 よく聞くアレだ。 脳震盪・・そうボソっと呟く。 「色々な説があるけどね。 その能力は本来人にはみんな備わってるものなんだけど、必要がないから普段は使われていない。 脳にショックを与えたことでその能力が目覚めてしまった・・とか。 あるいは何万人に一人の確立で生まれてくる能力者だとか。 神によって与えられた能力だっていう人もいる。 」 ま、僕はその神 云々ってのは全然信じてないけど。 そう気だるげに言う月島に、なんでそんな事を知っているんだと質問すると「フィクションでよくある設定デショ。 そういうの結構興味あるんだ、僕。 悪い?」とそっぽを向かれてしまった。 「君は今、どんな風に聞こえてるの?」 「どうって・・場所によるけど、人ごみの中にいる感じ・・だな。 みんな好き勝手話してて、落ちつかねぇ。 」 「君がどの程度聞こえてるのか、聞くことができるのか。 僕にはわからないけど、今の君は開きっぱなしになってるんだよ」 「開きっぱなし?」 「そ。 外と中が完全にごちゃまぜの状態。 」 「・・・」 「・・わかりやすく言うと、僕らがいつも聞こえてるのは外の世界の言葉。 誰かに向けて発せられる言葉のことね。 だけど君は今、中の言葉まで聞こえちゃってるんだ。 例えるなら人の家の中って勝手に入ることはできないだろ?」 「おう」 「だけど君は勝手に入ることができちゃうんだ。 外にいる限り本来聞こえないはずの家の中の声。 つまり人の心の中の声を、君は聞くことができるんだよ」 「・・・つまり、実際に発せられた声と、心の声が混じって区別ができていないってことか?」 「そういうこと」 今日一日、周りがやけに騒がしく感じたのはそのせいか。 どうすれば区別ができる?どうすれば聞かずにすむ? 悶々としている俺を見透かすように、月島は笑った。 「イメージしてみて、窓を閉める」 「窓を・・閉める?」 「余計なことが聞こえないように。 外と中の区別をつけるつもりで」 やってみようとするが中々上手くいかない。 思うようにいかず眉間のしわが険しくなってくる。 「もういい?僕もう帰りたいんだけど」 そういって支度をはじめる月島に影山は頷くことしかできかった。 「・・ま、最初はうまくいかないと思うけど。 なんかあったら来なよ。 相談ぐらいはのってあげる」 月島は床に置いてあった鞄を背負い、早くしなよと影山をせかす。 月島の後を追って、影山も会計を済ませ店を出た。 昨日と同様辺りは騒がしく、頭が痛くなってくる。 集中するんだ、俺。 意識をゆっくり落としていくように。 サーブを打つ前のように、いらない情報を遮断するイメージで。 閉ざした目をゆっくりと開ける。 すると先程より周りが幾分か静かになったように思えた。 良かった、できた。 「(数Iの小テストやばい・・)」 「(放課後のミーティングって何時からだっけ)」 そう思ったのもつかの間、脳内で直接再生されるように声が聞こえてくる。 「クソ・・全部は閉めきれなかったってことかよ・・」 コソコソ話のように所々ではなく、頭に直接響いてくる感じだから余計に鬱陶しい。 どうにかできないものかと考え、渋々と影山はある人の下へ向かった。 「そんなことで来たの?自分でなんとかしなよ」 ついて事情を説明して早々に言われた言葉がこれだ。 どうにかならねぇから来てんだろ!!っと盛大にツッコミたい。 「目障りで仕方ねえんだよ」 ボソッと呟くと彼・・月島は、ため息をついて鞄をガサゴソと漁りはじめた。 「・・仕方ないから貸してあげる」 「・・なんだこれ?」 「音楽プレイヤー。 僕はヘッドフォンで聴く方が好きなんだけど、流石に授業中はまずいデショ」 そう言って月島はその音楽プレイヤーと一緒にイヤホンを差し出してきた。 一体これがなんの役に立つのか。 そもそも音楽に無頓着な影山はこういった機器を使ったこともない。 「どうせ寝込みきめるつもりなんでしょ。 これならうつ伏せになっちゃえばわからないから」 「これ・・どうやって使うんだ?」 「はぁ?!使ったことないの?」 「・・・・・おん」 口を尖らせながら返事をした影山に ありえない、本当 王様ってバレー以外ダメだよね。 と月島は簡単に使い方を説明してくれた。 「昨日の今日でできるようになるのは難しいだろうし、聞こえちゃうのは仕方ないよ。 だったら実際に他の音を流して、"声"にばっかり意識を向けないようにすればいいんじゃない?」 「・・悪い、借りてく」 他にどうにかする術もみつからない。 影山は月島が差し出してきた音楽プレイヤーを借り、その教室を後にした。 「龍ーー!!シャツボタンずれてるぞ!」 「マジか!!助かったぜ、ノヤっさん!」 いつものように騒がしい部室。 今日もキツイ練習が終わり、各自着替えたり帰り支度をしている。 もう既に着替え終わっている月島に、影山は借りた音楽プレイヤー返した。 「どう?少しは役に立った?」 「おう。 サンキュー」 「ずっと授業聞かないわけにはいかないんだから、早く制御できるようになりなよね」 ただでさえ脳みそバレー 一色なんだから。 そう皮肉を漏らした月島を一瞬キッと睨みつける。 「・・・再生リストの3番目と7番目、好きだ」 音楽なんてろくに聴いた事がなかったが、月島が聴いているバンドの曲は激しすぎないメロディーでとても心地良かった。 「!・・へぇ」 月島は最初驚いたように目を丸くし、心なしか嬉しそうに微笑んだように見えた。 それから数日経ってなんとなく力の制御の仕方がわかるようになってきた。 集中してないと聞こえてきてしまう、なんてことはなくなって、最初こそ有難く使わせてもらっていた月島の音楽プレイヤーは今では必要がなくなった。 ただ一つ、予期していなかったことといえば 月島に貸してもらって聴いていたバンドを影山も好きになったことだ。 音楽の話題で盛り上がるなんてこと今までなくて、新鮮だった。 事あるごとに月島のもとを訪れていたせいか、最近では月島といることが多くなった。 「最近影山と月島仲いいなー」 「それ俺も思ってた!」 「まあチームとして結束する為にも、あそこが仲良くなってくれるに越したことはないよな」 「じゃあツッキー。 俺、嶋田さんのところに寄ってくから。 また明日ね!!」 「うん。 バイバイ」 澤村に肉まんを奢ってもらった後、それぞれ解散する。 日向は早々に「最近構ってやれてなかったから、今日はなつと遊ぶ約束してるんだ!」と帰ってしまったし、いつも月島と帰っている山口が離脱したことによって方面も一緒な影山と月島は必然的に一緒に帰ることになった。 以前だったらきっと、ただ気まずさだけが募る時間だったであろう。 だが、もう何話せばいいかわからないなんてことはない。 なんだかんだ月島のおかげで影山は周囲から浮くことなく生活できている。 あのまま自分の力を制御する術を知らなかったら、さぞ気味の悪い子だっただろう。 「月島」 もうお互いの帰り道の分岐点に差し掛かった時だ。 影山は立ち止まって、隣を歩く月島に話しかける。 「・・お前のおかげで俺は、自分の力を制御できるようになった。 きっと俺一人じゃ何が起こってるかよくわかんねぇまま、バレーにも、他のことにも集中できないまま毎日を過ごしてたと思う。 ・・お前が居てくれて、良かった」 きっといつもみたく気持ち悪いと悪態をつかれるものだと思っていた。 だが月島は切なそうに笑い、「そう。 」とだけ口にした。 じゃあ、僕はこっちだから。 そういって遠くなる月島の背中。 突然聞こえてきた声に驚く 窓は閉めているはずなのに。 でも、確かに聞こえたのだ。 「月島・・・?」 月島の声で [newpage] 夢をみる。 また同じ夢。 真っ白な空間に俺と誰かがいるその夢は、日に日に鮮明になっていっている。 今日はその人の顔をみる手前でおわった。 また同じ夢か。 そんなことより月島だ。 昨日確かに聞こえたあいつの声。 窓がまだしっかり閉じれていなかったのだろうか。 あれはきっと心の声で、月島は助けを求めている。 月島とは喧嘩ばかりだけれど、一緒に過ごしていくうちに見えずらいアイツの優しさに気づいてきた。 俺が迷いそうな時あいつは手を差し伸べてくれた。 なら俺も。 アイツを救ってやらなくては。 学校に着き朝練、昼、放課後の部活動と様子を見ていたけれど、特に変わった様子はない。 元々気が短い影山は絶えかねて本人に聞くことにした。 「月島・・おまえ最近なんかあったか」 「は?なにもないけど」 「でも・・」 「ってゆーか、何かあったのは君の方デショ」 「?俺は別に・・」 「"聞こえる"ようになって、色々あったじゃない。 忘れたの?」 確かにそうだ。 「・・まあ、またなんかあったら言いなよ。 アドバイスぐらいならしてあげるよ」 そう言ってひらりと月島は何処かへ行ってしまった。 いつもならやることをやってすぐに寝るのに、珍しく帰ってから頭を働かせる。 確かに月島の声で助けを求められたんだ。 でもなんで?最近では力の制御もできていたはずだし、あの時窓は閉まっていたはずなんだ。 その証拠に他の人間の声は聞こえなかった。 それなのに・・月島の声だけはしっかり聞こえた。 これは一体どういうことだ?聞いていた話とケースが違う。 聞こえてきた声が月島本人な為にこのことは話しずらいし・・・ ああクソッ わからないことだらけだ。 心の声が聞こえるようになった原因は推測でしかないし、能力についてもまだ未知数だ。 変な夢を何回も観るは、この能力が目覚めてから疑問は日に日に増していく。 まてよ、あの変な夢を最初に観たのはいつだ? たしか・・頭を打って病院で目覚めたときだ!! もしや・・・と思った。 この能力とあの夢は何か関係があるのではないか。 白い空間に、俺の他にもう一人誰かいる。 最初は漠然としたイメージでしかなかったが、最近は鮮明にわかるようになった。 背は影山よりも多分高い。 黒い服を身にまとった人が、影山の声に反応して振り返ったところで夢は終わってしまう。 もしかしたらその人は、何か知っているかもしれない。 そこまで考えたところで時計の針はもう12時を回ろうとしていた。 謎はまだ残るが影山には確信があった。 あの人に会えば何かわかる。 それは本能とでもいうのであろうか、直感というのであろうか。 明日も早い。 部屋の電気を消し、影山は床についた。 真っ白な空間。 それだけで影山は今自分が夢をみているのだとわかった。 もちろん少し先には黒い服の人がいる。 「なあ、アンタはこの能力のことについて、何か知ってるんだろ」 「俺の力は一定距離内にいる人の心の声、頭で考えている事がわかるって能力じゃなかったのか」 「力の制御はできていたはずなのに、なんであの時月島の声が聞こえたんだ」 「アンタは だれだ」 ジリリリリリ 目覚ましの音が鳴る。 その音に引き戻されるかのように影山は目を覚ました。 その音の出所に手を伸ばし音を止める。 「どういうことだよ」 昨晩考えていた通り、夢の中の人と接触した。 夢の中の人物はやはり能力について知っている人物であった。 ひとつ計算外だったのは、それが影山のよく知る人物だったということ。 短い休み時間に話せるような簡単な話ではないことぐらい影山にもわかっていたので、放課後。 部活動が終わるまで、その人物に話を持ちかけるのはやめた。 ぎゅっと肩にかかる鞄の紐を握り締めて、影山はその人物に詰め寄る。 「月島」 もうほとんど帰り支度を終えた彼に影山は声をかけた。 何時になく真剣な面持ちの影山に月島も何か感じたのだろうか。 「話がある」 そう言うと彼は黙って頷き「この前の店でいい?」と、ゆっくり話せる場所に移ることを許してくれた。 「何、話って」 赤い看板のチェーン店。 以前影山が月島に能力について教えてもらった場所だ。 「お前、聞こえてるだろ」 「・・は?」 「お前も俺と同じ力があるんじゃないか」 夢の中の人物。 影山より高い背、黒い・・烏野高校排球部のジャージを身にまとって振り返ったその顔は、月島のものだった。 月島は影山の考えていたとおり能力について知る人物だし、影山が今疑問に思う事柄の鍵となる人物でもある。 なんで月島が?やっぱりアイツに聞けばわかるのか?そういえば月島もアドバイスぐらいならしてやるって・・・ はっとした。 そもそもなんでアイツはこの能力についてこんなに詳しく知っているんだ。 改めて聞き返した時にも「そういう系統の小説をよく読むから」と本人は言っていたが、それだけでこんなに詳しくなれるであろうか。 ありきたりのよくある設定だ、と彼は言う。 しかし、フィクションはどうしたってフィクションなのだ。 実際に起きた能力とここまでシンクロしているのは可笑しすぎる。 だとすれば、月島はフィクションではなく事実を知っていることになる。 そこで一つの仮定が浮かび上がった。 月島も影山と同じ能力を持っているのではないか。 だとすれば全部合点がいく。 月島の物言いにはいくつか不可解な点があった。 発生したてという物言い。 なぜ月島にはそれがわかった? なぜアドバイスという表現を使った? あの時どうして月島の声が聞こえたかは謎のままだが 月島は同じ能力を持つ影山に、助けを求めていたのではないか。 「・・何を根拠に」 「色々引っかかることがあんだよ。 」 月島は下を向き中々口を開こうとしない。 「・・お前が力の使い方教えてくれなかったら、俺は多分今も力に振り回されてた。 ・・お前にもいたのか、そういうヤツ」 「・・・・」 「・・どっちにしろ、一人で抱え込むにはでかすぎる問題、だと思う。 だから、もしお前が俺と同じならちゃんと言えよ」 もう一度スーッと息を吸い、俯く彼を真っ直ぐ見て言う。 「お前も、聞こえてるのか」 「・・あーあ、黙っとくつもりだったんだけどなあ」 月島は参ったとでも言いたげに片腕を首に当て、顔を上げた。 「そうだよ。 僕も君とまったく同じ能力者。 ま、君より随分先輩だけどね」 [newpage] 小5の時。 人の心の声が聞こえるようになった。 最初は心の声とわからずに反応してしまい、母に顔をしかめられたっけ。 驚きが6割、好奇心4割。 この力に対する僕の最初の気持ちは大体こんなかんじ。 誰かに話す訳にもいかず、パソコンや本で超能力の類の情報をとにかく調べた。 僕が使えるようになった能力は『テレパス』というものに分類されるらしい。 自分がどの程度聞こえるのか。 特定の誰かの声だけを聞くことは可能か。 など、上がった疑問を片っ端から検証していった。 不便なことや辛いことだってあった。 そう思った。 聞こえるようになったのは正確に言えば、兄の一件の後。 なんで気づいてあげられなかったのだろう。 どれだけ僕は兄を追い詰めた?どれだけ僕は兄にいらぬ嘘をつかせた? 兄の聞こえない叫びに耳を傾けられていたら。 そんな僕の後悔のせいか、その能力は生まれた。 けれどーーーそれはそんな輝かしい能力じゃなかった。 聞きたくない情報、他人の心を覗いている罪悪感。 自分と人は決定的に違う。 誰も本当の意味で自分をわかってなどくれない。 こんな力ならいらない。 欲しくない。 でもそんな僕の気持ちに気づいてくれる人なんていなくて。 いつか同じ能力を持つ人に巡り会えたなら、どうか・・・ 「お前はどうやってこの力のこと知ったんだ」 「自分で探り当てた。 君が僕に相談してきたことは全部、僕が昔ぶち当たったことだよ」 シェイクのストローを弄びながら平然と言う月島。 自分で探り当てる。 それがどんなに大変で気が遠くなるような道のりか、影山にはわかる。 そんな道のりを経て、今 彼はここに居る。 平然としている彼とは対象に影山は胸が痛かった。 俺が勝手に傷ついてどうする。 もっと他に、できることがあるだろう。 せめて今だけは、月島が気負いせずに話せるように。 「相手スパイカーの心を読んでブロックしたりすんのか?」 だとしたら最強じゃねぇか・・!!とそわそわしながら月島を見つめる影山。 バレーの話をふっかけて暗くなった気持ちをあげようとする。 とはいっても、暗くなっていたのは影山だけなのだが。 「・・・王様は練習のとき、そういう風に力使ったりできたの?」 「・・やってみたけど、上手くできなかった。 でもお前なら」 「そんな単純なモノじゃないよ、これは。 例えば・・エレベーターで上に行きたい時。 君は『上のボタンを押そう』と思ってボタンを押さないでしょ?」 「・・おう」 「僕がわかるのはその時、相手が頭の中で考えていることであって、そういう無意識にしている行動が読めるわけじゃない。 王様はトス上げるとき何考えてる?」 「どこのコースに上げようかとか、速攻使おうかとか考えてるけど・・こう、頭の中で声に出してっていうより・・」 「本能?」 「それだ。 特に日向に関してはそこに居るから上げるっていうか・・速攻も『いける!』と思ったら体が動く感じだな」 「つまり、基本バレーにこの力は使えないってこと。 」 聞きたい対象者だけに力を制御するのも結構神経使うんだよね。 と、うんざりしたように月島は言った。 「月島は・・この能力のこと、誰かに話したことあるのか」 「ないよ、一度も。 」 ひゅっと息を飲む。 「あぁ、でも君に話しちゃったからもう 一度もってわけではなくなっちゃったね」 「・・なんで言わないんだよ」 そう、一人で抱えるにはあまりにも重い問題。 たった11そこらの頃からこれを一人で抱えてきたなんて。 「言ったところで相手にされないでしょ。 僕は変な奴っていうレッテル貼られるのはごめんだよ」 「じゃあ、相手が考えてること当ててみせたりすれば・・そうすればみんな信じ・・」 だーかーらー! 遮るように発せられたその言葉。 「なんでそこまでして信じてもらわなきゃいけないわけ?!」 「誰にもわかってもらえねえなんて、お前が辛いじゃねえか!!」 ガタッと音を立てて立ち上がる。 周りの客が何事かとざわついたのがわかった。 「・・仮に、君の言う様に信じてもらえたとしても、その後は?どうしてもその人は僕に心を読まれてるんじゃないかって不安になる。 絶対今までどおりにはいかなくなるんだ」 一人で抱え込んでどれだけ辛かったであろうか。 影山のように月島は教えてくれ 答えをもつ人にめぐり会えなかった。 正解がわからないまま自分で探し当ててきたのだ。 「・・俺は変わんねぇ」 搾り出すように発したその声は、彼に届いているだろうか。 「同じ力が使えるんだ。 俺もお前も同じだろ。 お前は俺が聞こえるってわかっても側にいてくれた。 お前が力を使えるとしても、俺だって今までのままだ」 「・・君って本当に理解不能だよね」 「あ゛!? 」 影山が自分と同じ能力をもつとわかったとき、放ってなどおけなかった。 彼がこの後どんなに苦しむかなんて簡単に想像できた。 せめて彼は自分のような思いをしないように、力になろう。 そう思っていたのに。 救われたのは僕のほうだった。 ずっと誰にも言わなかった。 言えなかった。 抱えてきた過去も、不安も、彼は当たり前とでもいうかのように受け入れ、取り去ってくれた。 「ありがとう」 「?なにがだ?」 「もういいよ」 素っ頓狂に首を傾げる影山に思わず月島は笑った。 [newpage] 気持ちのいい昼下がり。 あれからかれこれ10日は経とうとしている。 影山はあの後月島に、窓を閉じているときに声が聞こえたことを話した。 『へえー、まあ君が僕とまったく同じ能力だとは限らないし。 僕にわかるのはあくまでも自分が使える能力についてだし』 『・・おん』 『・・前にこの力で感情は読み取れないって話したよね』 『ああ』 『もしかしたら君の場合、人の感情も言葉として読みとれるのかもね』 そんな会話を思い出す。 月島の言っていたことは仮説にすぎないけれど、"感情"という言葉を聞いた時、やけにすんなり納得できた。 月島もこればっかりはわからないと手をあげるものだからまだまだこちらの能力については謎が多い。 「それでね、ツッキー」 聞き覚えのある声と愛称に振り返る。 「あ、影山~!」 こっちに気づいたのか山口が軽く手を振ってくる。 こちらも手を振り返せば山口と月島は去って行った。 気のせいだろうか。 今 月島が目を合わそうとしなかったように思えたのは。 きっと機嫌でも悪かったんだろうな そう思いなおし、影山も自分の教室に戻った。 「勘違いじゃ・・ない」 あれから数日経っても月島は影山と目を合わそうとしない。 それだけではない。 部活でも必要最低限のコミュニケーションしか取ろうとしないし、以前のように一緒に帰ったりすることもなくなった。 痺れを切らして教室まで赴くと「営業時間外」と逃げられてしまう始末だ。 明らかに避けられている。 理由はわからないがそれだけは明白で、菅原には何かあったかと心配されてしまった。 「最近お前ら仲良かったもんな~。 実は結構驚いてたんだよ、俺達」 「驚いた?」 「そ。 あんなにギクシャクしてたお前らがさ、日に日に仲良くなっていくもんだから。 もちろん、前だって違う形の仲のよさがあったんだけどな?」 なんていえばいいかな~と菅原は頭を唸らせた。 「前よりもっと、お互いをわかってる感じがしてたんだよ。 でも今はなんてゆーか、好んで干渉しあわない関係、入部当初に戻った感じ。 」 "戻った"という表現がこんなに違和感があるのはなぜだろう。 でも確かにそうなのだ。 最近は月島の存在が当たり前になっていた。 なにかあれば月島の下に相談に行っていたし、バレーの話から好きな音楽の話まで なんだかんだ色々話していたのだ。 だからこそ、胸のどこかにぽっかり穴があいたような、何かが足りないような気がするのであろう。 「影山はさ、これから月島とどうしていきたいの?」 「俺は、これからも・・・」 そこまで言って押し黙った。 菅原は優しく微笑み、自分より少し背の高い影山の頭にポンと手をのせた。 「だったら、ちゃんと言わないと。 言わずにわかるなんてこと、そうそうないだろ?」 「・・ちゃんと、話してみます」 部活が終わり、空は茜色に染まっていた。 教科書を取りに行くと言って部室を後にした月島を追いかけるように、影山も校舎に入った。 「月島!」 丁度階段を上っている月島を下から呼び止める。 ビクンと肩を震わせこちらに背を向けたまま月島は前に行こうとした。 「おい!何で逃げんだよ・・ッ!!」 三段飛ばしで階段を駆け上がり月島の腕を掴む。 「なに」 相変わらずこちらの顔を見ようとしない月島。 自分を拒絶されているように感じて苦しくなる。 「お前、なんで俺を避けるんだよ・・!」 依然として口を開こうとしない月島に、影山は苦々しく言う。 「そんなに俺が・・嫌いかよ」 なんで、どうして。 色々な想いが頭の中を駆け巡る。 昔からそうだった。 他人の感情を読み取るのは苦手で、人がどういう風に思うか、なんて気にしたことはなかった。 しかし過去に一度、それを大きく後悔したことがある。 中学時代。 敵ブロックをかわすことに囚われて、味方の打ちやすさを考えないトスを上げ続けた。 最初はついてこようと努力してくれた仲間だが、気づけば一人になっていた。 なんで考えようとしなかったのだろう、大事な仲間だったのに。 もうこんな結末に終わるのは嫌だ。 だから、もし大事なものができたら その時はーーー ちゃんと正面から大切にしようと思ったんだ。 「ちが・・ッ!」 そう言いかけて月島はまた口を閉ざした。 手が震えているのがわかる。 「月島・・・??」 "好きだ" 「え・・」 突如聞こえてきた声に驚く。 脳に直接響き渡るように聞こえるこの感じ。 あの時と一緒だ。 影山の驚いた声に月島はハッとしたように顔を上げた 「今、読んだでしょ!!!」 顔を赤くして怒る月島に戸惑いを隠せない。 月島はもういいと言って掴まれた手を振り払った。 ぐわん と体が浮く感覚がする。 「影山!!!」 バランスを崩し落下しそうになる影山を庇うように月島が抱きかかえる。 自分が宙に浮いているのがわかった。 そのまま二人は重力に引かれるように階段から落下した。 [newpage] 真っ白な空間。 幾度となく見たこの情景で、影山は自分が夢をみているのだと察した。 確かあのとき階段から落ちて・・ そうだ!!月島は 「ここ・・どこ」 そう黒いジャージ姿の月島が呟く。 これは夢の中の月島なのか?だとすると、今までとパターンが違う。 今までは一方的に影山が話しかけるだけで、月島は何も喋らないはずなのだ。 「夢だ。 俺の」 影山に気づいたのか、ぎょっとした顔で月島がこちらを見る。 「君の・・夢?」 「ああ」 「・・確か僕、階段から落ちて・・」 今度は影山がぎょっとした。 今目の前にいる月島は、もしかして・・・ 「なあ」 「なに」 「・・お前俺のこと、その、好きなのか」 目を見開いた月島だが はあ、とため息をつき観念したかのように話しはじめた。 「・・好きだよ」 "好き" その二文字に心臓が跳ね上がるのがわかる。 「それは、どういう意味で・・」 「君って本当にバカだよね」 「誰がバカだ!」 そう噛み付き返すと、月島は頭を掻きながら「恋愛感情の方」と呟いた。 「・・気持ち悪いだろ、男を好きになるなんて。 わかってるんだ、自分でもどうかしてるって。 ・・でも、好きなんだ。 好きになっちゃったんだ、影山のこと」 誰にも話せなかった。 聞きたくない情報、他人の心を覗いている罪悪感。 自分と人は決定的に違う。 誰も本当の意味で自分をわかってなどくれない。 こんな力ならいらない。 欲しくない。 でもそんな自分の気持ちに気づいてくれる人なんていなくて。 いつか同じ能力を持つ人に巡り会えたなら、どうか・・・ この気持ちをわかって欲しい。 たすけて欲しい。 そんな淡い期待を持ち続けていた。 当たり前とでもいうように気持ちをわかってくれた人。 「俺は変わらない」と、漠然とした不安から救ってくれた人。 自覚してしまえば、恋に落ちるのなんて簡単だった。 「・・この気持ちがバレて、君が離れていくのが、怖かった。 君に感情を読み取れる能力があるかもしれないとわかったから、尚更。 だから近づかないようにしてた。 "ただの部活仲間"に戻れるまで。 」 そこまで言うと月島は両膝に顔を突っ伏した。 混乱、高揚、様々な感情が渦巻いて、影山は言葉を見つけれずにいた。 月島が能力のことを打ち明けた日。 『この際だからお前が抱えてるもん全部吐け』という半ば強引な影山の言葉につられ、最初は渋っていた月島も ぽつり、ぽつりと言葉をこぼし始めた。 月島の兄の話を聞いたのもその時である。 最近は以前より月島のことを知れたと思っていた影山だが、彼にそんな過去があったなんて知らなくて。 何もしてやれない自分がもどかしい。 月島は、影山が困ったときには必ず手を差し伸べてくれたというのに。 『だったら、ちゃんと言わないと』 菅原に言われた言葉を思い出す。 「なあ、月島。 ・・俺に昔のことはどうにもできねぇけど、これからだったら幾らでもつくっていけるんじゃねーの?」 何のことかとでも言いたげに月島はこちらを見上げる。 「俺さ、お前に避けられんの すっげー辛かった。 それくらいお前の存在が当たり前になってたんだ。 」 そう、戻ったという表現がしっくりこない程に。 このままなんて嫌だ。 もっと月島と話したい、側に居たい。 「離れていくなんて誰が決めたんだよ。 どうしてお前は抱えたまま自己完結しようとするんだよ。 」 そうやって一人でまた悩んで、苦しんで。 一人で背負い込みすぎるな。 もうお前が苦しんでた"昔"とは違うんだぞ。 「俺がお前と同じ気持ちだっていう可能性はねーの?」 黙って話を聞いていた月島が目を見開いてゆっくりこちらを見た。 信じられない。 そう思っていることが目に見えてわかる。 「ありえない・・! だって、そんな都合のいいこと・・」 「俺は!!部活仲間だからだとか、同じ能力があるからとか・・・そんな条件が無くてもお前の側に居たいんだ。 ・・お前がまた辛いときには、抱えこまねぇように俺が捌け口になってやりてぇ。 もっとお前のこと知りたいし、これからも側に居たい」 さっき彼が言った言葉に応えるように 影山は真っ直ぐに月島を見て言った。 「俺も月島が好きだ」 「・・これで夢オチとかだったら本当に笑えないよね」 そう言う月島の顔は言葉に反して幸せそうで。 ゆっくり立ち上がった後、影山に笑いかけた。 「だから、起きたらまたちゃんと言うよ。 ツンと薬品の香りが漂う室内は夕焼けで真っ赤に染まっていた。 「あら起きたのね。 どう?気分は」 白衣を着た保健室の先生がこちらに問いかける。 「うす、大丈夫です」 「月島くんは?」 「右肩がちょっと痛みますけど、それ以外は」 湿布貼るからちょっと待ってね、なんて言いながら先生はパタパタと動き回る。 「二人とも階段から落っこちたのよ~頭打って気を失ってたみたいで、えーと・・誰だったかしら?バレー部の一年生の男の子が真っ青になって職員室駆け込んできたって、体育の柳瀬先生が仰ってたわ。 先生達が担架使ってここまで運んできてくれたのよ~」 主に体育科の先生達だから、今度会ったらお礼言っておきなさい。 そう説明しながら先生は手早く月島の手当てを終わらせた。 「二人とも頭打ったみたいだから、大丈夫だとは思うけど今度ちゃんと病院に行って診てもらいなさいね」 「はい、ありがとうございました」 「ありがとうございましたッ失礼します!」 さっきまで茜色をしていた空は、今では多くが藍色で占めている。 並んで歩く二人だがどうも気まずく会話も途切れてしまう。 ちょっとくらいなら。 月島が今何を考えているのか、心の声を聞いてもいいんじゃないのか。 月島の気持ちが知りたい。 自分のせいで怪我したことを怒っているのか、自分のことをどう思っているのか。 絶えかねた影山は月島の心の声を聞こうと集中した。 「・・・・聞こえない」 「え?」 「聞こえないんだよ、心の声が」 そう、月島の声だけではない。 他の人の声も全部、聞こえないのだ。 「・・・・僕も、聞こえなくなってる」 驚きというのとはまた別の感情。 特に月島はこの力で辛い思いを沢山してきた。 その力が消えた今、嬉しさがこみ上げてくるかと思いきや、戸惑いと、少しばかり寂しさが募った。 「なんで・・・・」 影山よりも能力が発生してから年月が長い分、月島は現実を飲み込めないでいるようだ。 「月島はこの力が使えるようになる直前に、頭打ったりしなかったのか?」 「別に・・・いや、したかもしれない。 」 能力発生との原因の一つとして考えられる、後頭部の強打。 影山も脳震盪を起こしてからこの力が発生した。 「公園でバレーしてて、木にボールが引っかかって・・取ろうと登ったらボールごと下に落っこちて」 「頭を打った」 「うん」 「俺さ、色々考えたんだ。 この力が発生した原因。 前にお前が言ったこと覚えてるか?」 「覚えてるよ」 『その能力は本来人にはみんな備わってるものなんだけど、必要がないから普段は使われていない。 脳にショックを与えたことでその能力が目覚めてしまった・・とか。 あるいは何万人に一人の確立で生まれてくる能力者だとか。 神によって与えられた能力だっていう人もいる。 』 「どれが本当の原因かってずっと考えてたんだけどさ、まずそこから違ってたんだ」 首を傾げて黙って聞く月島に影山は話つづける。 「どれかとかじゃない。 全部だ」 「全部・・?」 「俺達二人とも力を使えるようになる前に頭を打ってる。 脳にショックを与えたことで能力が目覚めるって、当たってると思うんだ」 「うん」 「何万に一人の確立でっていうのはさ、元々能力を使える状態で生まれてくる人の数じゃなくて」 「・・能力に目覚める人が何万人に一人の確立でいるってこと?」 「おう。 頭を打ったヤツが全員能力者になるわけじゃないと思うんだ」 「つまり、頭を打った人間でも発生するのは何万人に一人だってことか。 なるほどね。 じゃあ三つ目は?前にも言ったよね。 僕、神云々っていうのは信じてないんだけど」 キッパリとした口調で問いかける月島。 そのことに関しては憶測でしかなかった為、影山も言うのを躊躇った。 「・・俺もこれに関してはなんとも言えねえけど、お前の兄さんの話を聞いて思ったんだ。 俺もお前も、発生する前に力を望んでるんだ」 「どういうこと?」 「もし。 相手が何を考えているのか、どう思っているのか。 気づけていたらこんな思いしなくて済んだのに。 って」 月島は何か言い返してくるかと思ったが、意外にもその説明を黙って聞いている。 「それに・・何万人に一人しか能力者がいないんだとしたら、俺とお前が会ったのも奇跡的だなって」 「へぇ~君って結構ロマンチストだね~」 「あ゛?!」 「ま、偶然が重なっただけかもしれないけど。 もし神様がいるんだとしたら、人と上手くコミュニケーションが取れない僕らにこの能力を与えてくれたのかもね」 月島はヘラヘラしながらそう言うものだから 「おい、バカにしてるだろ」と口を尖らせると「あ、わかる~?」と軽い口調でかわされてしまった。 「影山」 さっきの口調とは一変、あらたまった様子で月島は影山を呼び止める。 「君はなんのことかわからないかもしれないけど・・夢で約束しちゃったんだ。 ちゃんと言うって。 」 スーッと一呼吸おき、影山を真っ直ぐ見据えて言う。 「好きだよ、影山」 心なしか緊張しているのが窺える。 その姿がなんだかおかしくて、嬉しくて。 自然と顔がほころんだ。 「夢オチじゃなくて、悪かったな」 肩の線を硬くしていた月島だが、その言葉だけでわかった。 「俺も月島が好きだ」 辺りはもうすっかりと暗くなって、空は吸い込まれるような瑠璃色と化していた。 宮城の夜は冷える。 星が映えるその空の下、寒さを理由にこっそりと手を繋ぐ。 「ねえ影山。 確かに僕たちは人の気持ちに気づける能力を望んだ。 それがいいことだと信じて。 でも・・本当はいらないものだったんだよ。 人の気持ちなんて本当なら言わなきゃわからない。 わからないからきっとわかり合いたいって思うんだ。 」 ぬくい影山の手に、ひんやりとした月島の手。 決して早くはない歩調で、真っ直ぐ続く道を歩いていく。 「僕も君も、自分の気持ちを伝えるのが下手で 喧嘩も沢山するだろうけど。 それでもちゃんとお互いの話を聞いて、ちょっとずつ進んでいけたらいいなって思うよ。 もう声に出さないで気持ちが分かるなんてことできないんだから。 」 そうだな。 と少しだけ繋いだ手に力を込める。 なあ月島。 なんで俺達、聞こえなくなったんだと思う? 「頭をまた打ったからデショ」なんてお前は言うかもしれねぇけど、俺はそれだけじゃないと思うんだ。 もう俺達は、人の心を読まなくても 相手の気持ちをわかろうとすることができるから。 自分の気持ちを伝えることができるから。 そんなことを言ったら、お前はまた笑うかな。 瑠璃色の星空の下、真っ直ぐ続くいつもの帰り道を 二人はこっそり手を繋いだまま いつもよりゆっくりと、歩いていった。 END.

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【ラスト2話】ハイキュー!401話「約束」のネタバレ・感想…次回最終回!

ハイキュー 影山 声

「いい影山。 君が聞こえてるのは人の"心の声"だ」 ある日心の声が聞こえるようになってしまった影山くんと、月島くんのお話。 心の声が聞こえるようになった原因。 未知数な能力。 変な夢。 謎は増えていく中、ちょっとずつ距離を縮めていく二人。 そんな特殊設定ありきの小説です。 窓を閉めるって表現は昔観てたドラマから。 とっても表しやすい表現でした・・!! 設定等は全て考えた捏造です。 真っ白な空間。 そこには自分の他にも人間らしきものがいる。 誰かはわからない。 「おい、ここはどこだ?」 ぼんやりとしたシルエットの真っ黒な背中に語りかけるが、返事はない。 「アンタは・・」 「・・・やま!かげやまくーん!!」 「ん・・」 「やっと起きた!大丈夫かー?」 「日向・・?」 朦朧とした意識の中見えたのは、癖のあるオレンジ色の髪。 なんだ、今のは夢かと目を擦る。 「ごめんね影山、無理に起こすなって言ったんだけどさ」 そう申し訳なさそうに笑う山口に首を傾げる。 「影山、練習中に頭打ったんだよ。 それで脳震盪起こして病院に運ばれたんだ」 「あー・・、そういえば」 いつものように日向と速攻のタイミングの練習をしていた時のことだ。 頭上に上がるボールにばかり気をとられて足元をよくみていなかった。 蒸し暑い体育館では当然汗もかくもので、床にしたたり落ちた汗に滑って盛大にこけたのだ。 山口の話ではどうも俺は打ち所が悪かったらしく、気を失った俺にパニクった武田先生が救急車を呼んでそのまま救急搬送されたらしい。 そして今に至るわけで、部活後に心配した一年生三人が来てくれたのだ。 「特に異常はないみたいで良かったね!はやく元気になってね」 「おう」 それじゃあ俺達はこれで。 早くトスくれよー!!と大声で騒ぐ日向に月島が一喝いれ、三人は帰っていった。 事が事だっただけにとんとん拍子に検査も終わり、あっという間に退院できた。 今日からまた学校な訳だが、やけに辺りは騒がしい。 休み時間はもちろんのこと、授業中も、放課後も、ひっきりなしに声が飛び交っているのだ。 「影山 もう大丈夫なの?」 待ちに待った部活の時間。 アップを終えた菅原が影山を気遣う。 「うす。 ご迷惑おかけしました!!」 「気ぃつけろよ~怪我して試合出れないとかお前も嫌だべ~?」 まぁ無事でなにより。 そう言って菅原はニカッと笑った。 「そういえば今日どこも騒がしいっすね」 「そう?いつもと変わらないと思うけど・・久々に来たから、そう感じるんじゃない?」 「・・そッスね」 それにしたって騒がしすぎやしないかといまいち腑に落ちなかった影山だが、菅原の言葉にも一理ある。 きっとそうだろうと自分に言い聞かせ練習に戻った。 AチームとBチームに分かれて形式練習をする。 久々の練習で影山もいつも以上に気合が入っていた。 「ホギャ!」 「おい日向!!もっと腰落とせって何度言ったらわかんだよこんのボゲエ!!」 「うう゛・・」 レシーブミスをした日向にすかさず影山が怒鳴る。 「(影山のヤツ・・いつか絶対けちょんけちょんにしてやっからな!!)」 「あ゛!?」 「ひい!!」 「俺を倒したかったらまずそのクソみたいなレシーブなんとかしろ!!」 「な、んなな、なんだよバカ!わかってっし!!エスパーかよ!!」 「・・・・」 「?どうしたのツッキー?」 「・・いや」 それからも試合は続いていき、両チームとも一歩も引かない戦いとなっていた。 「おい!!」 「・・なに」 「囮だってわかっててもちゃんと全力で入ってこいよ!!」 「・・はいはい、わかったよ」 手を抜いて飛んだ月島に影山が怒る。 今のは月島が引き下がったからまだいい方で、酷いときには両者譲らず澤村や田中の仲裁が入る。 「(だって今のはレフトにあがるってバレバレだったデショ。 無駄な体力使いたくないんだけど)」 「おい、無駄ってなんだよ!!」 月島のゼッケンの胸倉を掴みあげて、影山が怒鳴る。 月島は驚いたように目を丸くしただけで、いつものように何か言い返してはこない。 熱くなった頭ながらにきっと誰か止めに入ってくるんだろうなと思ったが、その考えに反して辺りはシーーンと静まりかえっていた。 「お、おい!影山!なに言ってんだよ!!」 「だってコイツが・・」 「今月島・・何も言ってねーべ?」 え、 周りを見渡せばみんな眉を顰めている。 心配して向けられるその視線がなにやら異様なものを見ているかのような目に感じて気持ち悪くなる。 「(一体どうしたんだ影山・・調子でも悪いのか?)」 「(月島、なんか言ってたのかな・・)」 「(あああ!!ツッキー!!)」 声は聞こえるのに口が動いていない。 これは・・心の声なのか? 脳に直接響き渡るように聞こえてくる声にパニックになる。 「・・・頭冷やしてきます」 「ちょ、影山!何処行くんだよ!」 遠くなっていく菅原の声を無視して、近くの水道まで走る。 俺は心の声が聞こえるようになってしまったのか?なんで?あの時頭を打ったから? 「王様」 後ろから投げかけられた声は、さっき自分が喧嘩をふっかけてしまった相手だ。 「・・王様ってよぶんじゃねえ」 「やっぱりね」 何がだよ、とくるりと体の向きを変えて向き直る。 「今僕、声に出して君のこと呼んでない」 背筋が凍る。 口をぱくぱくとして言葉を探すがでてこない。 「君・・聞こえてるよね?」 [newpage] 月島に言っていいものか、なにより自分が1番この状況をわかってない。 変に思われたんじゃないか。 「(クソッ・・!情報が足りねえ・・!)」 「別に隠さなくてもいいよ。 月島の物言いは何か知っているようだった。 「・・何か知ってるのか」 「さあねーまあ君よりは?」 「・・お前の知ってること、おしえろ」 「教えてください月島さんって言えたら教えてあげてもいいけど」 「あ゛?!」 「冗談だって。 最初からそのつもりだよ。 今君相当不憫だし」 けろっと軽やかに影山をからかう月島。 そんな月島に影山もむっと口を尖らせる。 「まあ今ここで話すには長くなるから、とりあえず部活が終わるまでは我慢しなよね」 一緒に戻ると変に思われるだろうから、君はもう少し後に来なよ。 そう言い残して月島は体育館のほうに歩きだした。 「月島」 心底面倒くさそうに振り返る月島。 そんな彼に、口をもぞもぞさせながら言葉を紡ぐ。 「・・さっきは、悪かった」 月島は驚いたように目を見開き 君が素直だと調子狂うとだけ悪態をついて戻っていった。 「さっきはすんませんした!!頭冷やしてきました」 ちょっと間を空けてから体育館に戻った影山は扉の前に着くと同時に思い切り頭を下げる。 みんな突然訳のわからないことを言った自分を気味悪がっているかと心配していたが、おーおかえりーなんて朗らかに迎えられ、影山の心配は杞憂に終わった。 「月島」 「あぁ、そうだった」 あれから何事もなく部活は終わり、みんな部室で帰り支度をする。 エナメルの鞄を肩にかけ、影山は月島に声をかけた。 そう、月島には聞きたいことが沢山あるのだ。 「ツッキー!帰ろー!!」 「ごめん山口。 僕今日寄るところあるから先帰っていいよ」 「そう?あぁ、駅前のCDショップ?そういえばこないだ行きたいって言ってたもんね。 俺も一緒行っていい?」 「今日は・・影山と話があるから」 「え・・」 その月島の言葉に山口だけでなく部室にいた全員が反応した。 今日あんなことがあったのだ。 不信に思っても可笑しくない。 「・・別にみなさんが考えてるようなことじゃありませんよ。 本当にちょっと寄るところがあるだけです」 「そ、そうか」 「気ぃつけて帰れよー!」 ぎこちない空気の中、二人は部室を後にした。 てゆーか、俺と月島が二人きりってそんなに心配か 「どっか入ろうか」 「おう」 赤い看板がトレードマークのチェーン店。 適当に空いている席を探し、二人は隅の二人席に腰をおろした。 「よくそんな食べれるね」 「お前はそれで腹減んないのか」 影山が頼んだのはビックワックにポテトとナゲットのセット。 一方月島はチーズバーガーとバニラシェイクを頼んでいた。 細身なのが納得できるぐらい彼は少食で、いつか折れちまうぞ。 なんてどうしようもないことを考えた。 「・・さて、と。 君に話す約束だったしね。 僕が知ってることは話すよ」 部活後の空腹感を埋めるかのようにそれぞれ食事を済ませ、ちょくちょく会話を交えひとしきりした時である。 ズッと音を立ててシェイクを飲み終えたらしい月島が会話を切りだした。 「いい影山。 実際に発せられるのとはまた別の声。 人が考えてることがよめるって言ってもいいかな」 「そんな・・なんで急に・・!」 「恐らく・・この間の脳震盪が原因じゃない?」 やっぱりか。 よく聞くアレだ。 脳震盪・・そうボソっと呟く。 「色々な説があるけどね。 その能力は本来人にはみんな備わってるものなんだけど、必要がないから普段は使われていない。 脳にショックを与えたことでその能力が目覚めてしまった・・とか。 あるいは何万人に一人の確立で生まれてくる能力者だとか。 神によって与えられた能力だっていう人もいる。 」 ま、僕はその神 云々ってのは全然信じてないけど。 そう気だるげに言う月島に、なんでそんな事を知っているんだと質問すると「フィクションでよくある設定デショ。 そういうの結構興味あるんだ、僕。 悪い?」とそっぽを向かれてしまった。 「君は今、どんな風に聞こえてるの?」 「どうって・・場所によるけど、人ごみの中にいる感じ・・だな。 みんな好き勝手話してて、落ちつかねぇ。 」 「君がどの程度聞こえてるのか、聞くことができるのか。 僕にはわからないけど、今の君は開きっぱなしになってるんだよ」 「開きっぱなし?」 「そ。 外と中が完全にごちゃまぜの状態。 」 「・・・」 「・・わかりやすく言うと、僕らがいつも聞こえてるのは外の世界の言葉。 誰かに向けて発せられる言葉のことね。 だけど君は今、中の言葉まで聞こえちゃってるんだ。 例えるなら人の家の中って勝手に入ることはできないだろ?」 「おう」 「だけど君は勝手に入ることができちゃうんだ。 外にいる限り本来聞こえないはずの家の中の声。 つまり人の心の中の声を、君は聞くことができるんだよ」 「・・・つまり、実際に発せられた声と、心の声が混じって区別ができていないってことか?」 「そういうこと」 今日一日、周りがやけに騒がしく感じたのはそのせいか。 どうすれば区別ができる?どうすれば聞かずにすむ? 悶々としている俺を見透かすように、月島は笑った。 「イメージしてみて、窓を閉める」 「窓を・・閉める?」 「余計なことが聞こえないように。 外と中の区別をつけるつもりで」 やってみようとするが中々上手くいかない。 思うようにいかず眉間のしわが険しくなってくる。 「もういい?僕もう帰りたいんだけど」 そういって支度をはじめる月島に影山は頷くことしかできかった。 「・・ま、最初はうまくいかないと思うけど。 なんかあったら来なよ。 相談ぐらいはのってあげる」 月島は床に置いてあった鞄を背負い、早くしなよと影山をせかす。 月島の後を追って、影山も会計を済ませ店を出た。 昨日と同様辺りは騒がしく、頭が痛くなってくる。 集中するんだ、俺。 意識をゆっくり落としていくように。 サーブを打つ前のように、いらない情報を遮断するイメージで。 閉ざした目をゆっくりと開ける。 すると先程より周りが幾分か静かになったように思えた。 良かった、できた。 「(数Iの小テストやばい・・)」 「(放課後のミーティングって何時からだっけ)」 そう思ったのもつかの間、脳内で直接再生されるように声が聞こえてくる。 「クソ・・全部は閉めきれなかったってことかよ・・」 コソコソ話のように所々ではなく、頭に直接響いてくる感じだから余計に鬱陶しい。 どうにかできないものかと考え、渋々と影山はある人の下へ向かった。 「そんなことで来たの?自分でなんとかしなよ」 ついて事情を説明して早々に言われた言葉がこれだ。 どうにかならねぇから来てんだろ!!っと盛大にツッコミたい。 「目障りで仕方ねえんだよ」 ボソッと呟くと彼・・月島は、ため息をついて鞄をガサゴソと漁りはじめた。 「・・仕方ないから貸してあげる」 「・・なんだこれ?」 「音楽プレイヤー。 僕はヘッドフォンで聴く方が好きなんだけど、流石に授業中はまずいデショ」 そう言って月島はその音楽プレイヤーと一緒にイヤホンを差し出してきた。 一体これがなんの役に立つのか。 そもそも音楽に無頓着な影山はこういった機器を使ったこともない。 「どうせ寝込みきめるつもりなんでしょ。 これならうつ伏せになっちゃえばわからないから」 「これ・・どうやって使うんだ?」 「はぁ?!使ったことないの?」 「・・・・・おん」 口を尖らせながら返事をした影山に ありえない、本当 王様ってバレー以外ダメだよね。 と月島は簡単に使い方を説明してくれた。 「昨日の今日でできるようになるのは難しいだろうし、聞こえちゃうのは仕方ないよ。 だったら実際に他の音を流して、"声"にばっかり意識を向けないようにすればいいんじゃない?」 「・・悪い、借りてく」 他にどうにかする術もみつからない。 影山は月島が差し出してきた音楽プレイヤーを借り、その教室を後にした。 「龍ーー!!シャツボタンずれてるぞ!」 「マジか!!助かったぜ、ノヤっさん!」 いつものように騒がしい部室。 今日もキツイ練習が終わり、各自着替えたり帰り支度をしている。 もう既に着替え終わっている月島に、影山は借りた音楽プレイヤー返した。 「どう?少しは役に立った?」 「おう。 サンキュー」 「ずっと授業聞かないわけにはいかないんだから、早く制御できるようになりなよね」 ただでさえ脳みそバレー 一色なんだから。 そう皮肉を漏らした月島を一瞬キッと睨みつける。 「・・・再生リストの3番目と7番目、好きだ」 音楽なんてろくに聴いた事がなかったが、月島が聴いているバンドの曲は激しすぎないメロディーでとても心地良かった。 「!・・へぇ」 月島は最初驚いたように目を丸くし、心なしか嬉しそうに微笑んだように見えた。 それから数日経ってなんとなく力の制御の仕方がわかるようになってきた。 集中してないと聞こえてきてしまう、なんてことはなくなって、最初こそ有難く使わせてもらっていた月島の音楽プレイヤーは今では必要がなくなった。 ただ一つ、予期していなかったことといえば 月島に貸してもらって聴いていたバンドを影山も好きになったことだ。 音楽の話題で盛り上がるなんてこと今までなくて、新鮮だった。 事あるごとに月島のもとを訪れていたせいか、最近では月島といることが多くなった。 「最近影山と月島仲いいなー」 「それ俺も思ってた!」 「まあチームとして結束する為にも、あそこが仲良くなってくれるに越したことはないよな」 「じゃあツッキー。 俺、嶋田さんのところに寄ってくから。 また明日ね!!」 「うん。 バイバイ」 澤村に肉まんを奢ってもらった後、それぞれ解散する。 日向は早々に「最近構ってやれてなかったから、今日はなつと遊ぶ約束してるんだ!」と帰ってしまったし、いつも月島と帰っている山口が離脱したことによって方面も一緒な影山と月島は必然的に一緒に帰ることになった。 以前だったらきっと、ただ気まずさだけが募る時間だったであろう。 だが、もう何話せばいいかわからないなんてことはない。 なんだかんだ月島のおかげで影山は周囲から浮くことなく生活できている。 あのまま自分の力を制御する術を知らなかったら、さぞ気味の悪い子だっただろう。 「月島」 もうお互いの帰り道の分岐点に差し掛かった時だ。 影山は立ち止まって、隣を歩く月島に話しかける。 「・・お前のおかげで俺は、自分の力を制御できるようになった。 きっと俺一人じゃ何が起こってるかよくわかんねぇまま、バレーにも、他のことにも集中できないまま毎日を過ごしてたと思う。 ・・お前が居てくれて、良かった」 きっといつもみたく気持ち悪いと悪態をつかれるものだと思っていた。 だが月島は切なそうに笑い、「そう。 」とだけ口にした。 じゃあ、僕はこっちだから。 そういって遠くなる月島の背中。 突然聞こえてきた声に驚く 窓は閉めているはずなのに。 でも、確かに聞こえたのだ。 「月島・・・?」 月島の声で [newpage] 夢をみる。 また同じ夢。 真っ白な空間に俺と誰かがいるその夢は、日に日に鮮明になっていっている。 今日はその人の顔をみる手前でおわった。 また同じ夢か。 そんなことより月島だ。 昨日確かに聞こえたあいつの声。 窓がまだしっかり閉じれていなかったのだろうか。 あれはきっと心の声で、月島は助けを求めている。 月島とは喧嘩ばかりだけれど、一緒に過ごしていくうちに見えずらいアイツの優しさに気づいてきた。 俺が迷いそうな時あいつは手を差し伸べてくれた。 なら俺も。 アイツを救ってやらなくては。 学校に着き朝練、昼、放課後の部活動と様子を見ていたけれど、特に変わった様子はない。 元々気が短い影山は絶えかねて本人に聞くことにした。 「月島・・おまえ最近なんかあったか」 「は?なにもないけど」 「でも・・」 「ってゆーか、何かあったのは君の方デショ」 「?俺は別に・・」 「"聞こえる"ようになって、色々あったじゃない。 忘れたの?」 確かにそうだ。 「・・まあ、またなんかあったら言いなよ。 アドバイスぐらいならしてあげるよ」 そう言ってひらりと月島は何処かへ行ってしまった。 いつもならやることをやってすぐに寝るのに、珍しく帰ってから頭を働かせる。 確かに月島の声で助けを求められたんだ。 でもなんで?最近では力の制御もできていたはずだし、あの時窓は閉まっていたはずなんだ。 その証拠に他の人間の声は聞こえなかった。 それなのに・・月島の声だけはしっかり聞こえた。 これは一体どういうことだ?聞いていた話とケースが違う。 聞こえてきた声が月島本人な為にこのことは話しずらいし・・・ ああクソッ わからないことだらけだ。 心の声が聞こえるようになった原因は推測でしかないし、能力についてもまだ未知数だ。 変な夢を何回も観るは、この能力が目覚めてから疑問は日に日に増していく。 まてよ、あの変な夢を最初に観たのはいつだ? たしか・・頭を打って病院で目覚めたときだ!! もしや・・・と思った。 この能力とあの夢は何か関係があるのではないか。 白い空間に、俺の他にもう一人誰かいる。 最初は漠然としたイメージでしかなかったが、最近は鮮明にわかるようになった。 背は影山よりも多分高い。 黒い服を身にまとった人が、影山の声に反応して振り返ったところで夢は終わってしまう。 もしかしたらその人は、何か知っているかもしれない。 そこまで考えたところで時計の針はもう12時を回ろうとしていた。 謎はまだ残るが影山には確信があった。 あの人に会えば何かわかる。 それは本能とでもいうのであろうか、直感というのであろうか。 明日も早い。 部屋の電気を消し、影山は床についた。 真っ白な空間。 それだけで影山は今自分が夢をみているのだとわかった。 もちろん少し先には黒い服の人がいる。 「なあ、アンタはこの能力のことについて、何か知ってるんだろ」 「俺の力は一定距離内にいる人の心の声、頭で考えている事がわかるって能力じゃなかったのか」 「力の制御はできていたはずなのに、なんであの時月島の声が聞こえたんだ」 「アンタは だれだ」 ジリリリリリ 目覚ましの音が鳴る。 その音に引き戻されるかのように影山は目を覚ました。 その音の出所に手を伸ばし音を止める。 「どういうことだよ」 昨晩考えていた通り、夢の中の人と接触した。 夢の中の人物はやはり能力について知っている人物であった。 ひとつ計算外だったのは、それが影山のよく知る人物だったということ。 短い休み時間に話せるような簡単な話ではないことぐらい影山にもわかっていたので、放課後。 部活動が終わるまで、その人物に話を持ちかけるのはやめた。 ぎゅっと肩にかかる鞄の紐を握り締めて、影山はその人物に詰め寄る。 「月島」 もうほとんど帰り支度を終えた彼に影山は声をかけた。 何時になく真剣な面持ちの影山に月島も何か感じたのだろうか。 「話がある」 そう言うと彼は黙って頷き「この前の店でいい?」と、ゆっくり話せる場所に移ることを許してくれた。 「何、話って」 赤い看板のチェーン店。 以前影山が月島に能力について教えてもらった場所だ。 「お前、聞こえてるだろ」 「・・は?」 「お前も俺と同じ力があるんじゃないか」 夢の中の人物。 影山より高い背、黒い・・烏野高校排球部のジャージを身にまとって振り返ったその顔は、月島のものだった。 月島は影山の考えていたとおり能力について知る人物だし、影山が今疑問に思う事柄の鍵となる人物でもある。 なんで月島が?やっぱりアイツに聞けばわかるのか?そういえば月島もアドバイスぐらいならしてやるって・・・ はっとした。 そもそもなんでアイツはこの能力についてこんなに詳しく知っているんだ。 改めて聞き返した時にも「そういう系統の小説をよく読むから」と本人は言っていたが、それだけでこんなに詳しくなれるであろうか。 ありきたりのよくある設定だ、と彼は言う。 しかし、フィクションはどうしたってフィクションなのだ。 実際に起きた能力とここまでシンクロしているのは可笑しすぎる。 だとすれば、月島はフィクションではなく事実を知っていることになる。 そこで一つの仮定が浮かび上がった。 月島も影山と同じ能力を持っているのではないか。 だとすれば全部合点がいく。 月島の物言いにはいくつか不可解な点があった。 発生したてという物言い。 なぜ月島にはそれがわかった? なぜアドバイスという表現を使った? あの時どうして月島の声が聞こえたかは謎のままだが 月島は同じ能力を持つ影山に、助けを求めていたのではないか。 「・・何を根拠に」 「色々引っかかることがあんだよ。 」 月島は下を向き中々口を開こうとしない。 「・・お前が力の使い方教えてくれなかったら、俺は多分今も力に振り回されてた。 ・・お前にもいたのか、そういうヤツ」 「・・・・」 「・・どっちにしろ、一人で抱え込むにはでかすぎる問題、だと思う。 だから、もしお前が俺と同じならちゃんと言えよ」 もう一度スーッと息を吸い、俯く彼を真っ直ぐ見て言う。 「お前も、聞こえてるのか」 「・・あーあ、黙っとくつもりだったんだけどなあ」 月島は参ったとでも言いたげに片腕を首に当て、顔を上げた。 「そうだよ。 僕も君とまったく同じ能力者。 ま、君より随分先輩だけどね」 [newpage] 小5の時。 人の心の声が聞こえるようになった。 最初は心の声とわからずに反応してしまい、母に顔をしかめられたっけ。 驚きが6割、好奇心4割。 この力に対する僕の最初の気持ちは大体こんなかんじ。 誰かに話す訳にもいかず、パソコンや本で超能力の類の情報をとにかく調べた。 僕が使えるようになった能力は『テレパス』というものに分類されるらしい。 自分がどの程度聞こえるのか。 特定の誰かの声だけを聞くことは可能か。 など、上がった疑問を片っ端から検証していった。 不便なことや辛いことだってあった。 そう思った。 聞こえるようになったのは正確に言えば、兄の一件の後。 なんで気づいてあげられなかったのだろう。 どれだけ僕は兄を追い詰めた?どれだけ僕は兄にいらぬ嘘をつかせた? 兄の聞こえない叫びに耳を傾けられていたら。 そんな僕の後悔のせいか、その能力は生まれた。 けれどーーーそれはそんな輝かしい能力じゃなかった。 聞きたくない情報、他人の心を覗いている罪悪感。 自分と人は決定的に違う。 誰も本当の意味で自分をわかってなどくれない。 こんな力ならいらない。 欲しくない。 でもそんな僕の気持ちに気づいてくれる人なんていなくて。 いつか同じ能力を持つ人に巡り会えたなら、どうか・・・ 「お前はどうやってこの力のこと知ったんだ」 「自分で探り当てた。 君が僕に相談してきたことは全部、僕が昔ぶち当たったことだよ」 シェイクのストローを弄びながら平然と言う月島。 自分で探り当てる。 それがどんなに大変で気が遠くなるような道のりか、影山にはわかる。 そんな道のりを経て、今 彼はここに居る。 平然としている彼とは対象に影山は胸が痛かった。 俺が勝手に傷ついてどうする。 もっと他に、できることがあるだろう。 せめて今だけは、月島が気負いせずに話せるように。 「相手スパイカーの心を読んでブロックしたりすんのか?」 だとしたら最強じゃねぇか・・!!とそわそわしながら月島を見つめる影山。 バレーの話をふっかけて暗くなった気持ちをあげようとする。 とはいっても、暗くなっていたのは影山だけなのだが。 「・・・王様は練習のとき、そういう風に力使ったりできたの?」 「・・やってみたけど、上手くできなかった。 でもお前なら」 「そんな単純なモノじゃないよ、これは。 例えば・・エレベーターで上に行きたい時。 君は『上のボタンを押そう』と思ってボタンを押さないでしょ?」 「・・おう」 「僕がわかるのはその時、相手が頭の中で考えていることであって、そういう無意識にしている行動が読めるわけじゃない。 王様はトス上げるとき何考えてる?」 「どこのコースに上げようかとか、速攻使おうかとか考えてるけど・・こう、頭の中で声に出してっていうより・・」 「本能?」 「それだ。 特に日向に関してはそこに居るから上げるっていうか・・速攻も『いける!』と思ったら体が動く感じだな」 「つまり、基本バレーにこの力は使えないってこと。 」 聞きたい対象者だけに力を制御するのも結構神経使うんだよね。 と、うんざりしたように月島は言った。 「月島は・・この能力のこと、誰かに話したことあるのか」 「ないよ、一度も。 」 ひゅっと息を飲む。 「あぁ、でも君に話しちゃったからもう 一度もってわけではなくなっちゃったね」 「・・なんで言わないんだよ」 そう、一人で抱えるにはあまりにも重い問題。 たった11そこらの頃からこれを一人で抱えてきたなんて。 「言ったところで相手にされないでしょ。 僕は変な奴っていうレッテル貼られるのはごめんだよ」 「じゃあ、相手が考えてること当ててみせたりすれば・・そうすればみんな信じ・・」 だーかーらー! 遮るように発せられたその言葉。 「なんでそこまでして信じてもらわなきゃいけないわけ?!」 「誰にもわかってもらえねえなんて、お前が辛いじゃねえか!!」 ガタッと音を立てて立ち上がる。 周りの客が何事かとざわついたのがわかった。 「・・仮に、君の言う様に信じてもらえたとしても、その後は?どうしてもその人は僕に心を読まれてるんじゃないかって不安になる。 絶対今までどおりにはいかなくなるんだ」 一人で抱え込んでどれだけ辛かったであろうか。 影山のように月島は教えてくれ 答えをもつ人にめぐり会えなかった。 正解がわからないまま自分で探し当ててきたのだ。 「・・俺は変わんねぇ」 搾り出すように発したその声は、彼に届いているだろうか。 「同じ力が使えるんだ。 俺もお前も同じだろ。 お前は俺が聞こえるってわかっても側にいてくれた。 お前が力を使えるとしても、俺だって今までのままだ」 「・・君って本当に理解不能だよね」 「あ゛!? 」 影山が自分と同じ能力をもつとわかったとき、放ってなどおけなかった。 彼がこの後どんなに苦しむかなんて簡単に想像できた。 せめて彼は自分のような思いをしないように、力になろう。 そう思っていたのに。 救われたのは僕のほうだった。 ずっと誰にも言わなかった。 言えなかった。 抱えてきた過去も、不安も、彼は当たり前とでもいうかのように受け入れ、取り去ってくれた。 「ありがとう」 「?なにがだ?」 「もういいよ」 素っ頓狂に首を傾げる影山に思わず月島は笑った。 [newpage] 気持ちのいい昼下がり。 あれからかれこれ10日は経とうとしている。 影山はあの後月島に、窓を閉じているときに声が聞こえたことを話した。 『へえー、まあ君が僕とまったく同じ能力だとは限らないし。 僕にわかるのはあくまでも自分が使える能力についてだし』 『・・おん』 『・・前にこの力で感情は読み取れないって話したよね』 『ああ』 『もしかしたら君の場合、人の感情も言葉として読みとれるのかもね』 そんな会話を思い出す。 月島の言っていたことは仮説にすぎないけれど、"感情"という言葉を聞いた時、やけにすんなり納得できた。 月島もこればっかりはわからないと手をあげるものだからまだまだこちらの能力については謎が多い。 「それでね、ツッキー」 聞き覚えのある声と愛称に振り返る。 「あ、影山~!」 こっちに気づいたのか山口が軽く手を振ってくる。 こちらも手を振り返せば山口と月島は去って行った。 気のせいだろうか。 今 月島が目を合わそうとしなかったように思えたのは。 きっと機嫌でも悪かったんだろうな そう思いなおし、影山も自分の教室に戻った。 「勘違いじゃ・・ない」 あれから数日経っても月島は影山と目を合わそうとしない。 それだけではない。 部活でも必要最低限のコミュニケーションしか取ろうとしないし、以前のように一緒に帰ったりすることもなくなった。 痺れを切らして教室まで赴くと「営業時間外」と逃げられてしまう始末だ。 明らかに避けられている。 理由はわからないがそれだけは明白で、菅原には何かあったかと心配されてしまった。 「最近お前ら仲良かったもんな~。 実は結構驚いてたんだよ、俺達」 「驚いた?」 「そ。 あんなにギクシャクしてたお前らがさ、日に日に仲良くなっていくもんだから。 もちろん、前だって違う形の仲のよさがあったんだけどな?」 なんていえばいいかな~と菅原は頭を唸らせた。 「前よりもっと、お互いをわかってる感じがしてたんだよ。 でも今はなんてゆーか、好んで干渉しあわない関係、入部当初に戻った感じ。 」 "戻った"という表現がこんなに違和感があるのはなぜだろう。 でも確かにそうなのだ。 最近は月島の存在が当たり前になっていた。 なにかあれば月島の下に相談に行っていたし、バレーの話から好きな音楽の話まで なんだかんだ色々話していたのだ。 だからこそ、胸のどこかにぽっかり穴があいたような、何かが足りないような気がするのであろう。 「影山はさ、これから月島とどうしていきたいの?」 「俺は、これからも・・・」 そこまで言って押し黙った。 菅原は優しく微笑み、自分より少し背の高い影山の頭にポンと手をのせた。 「だったら、ちゃんと言わないと。 言わずにわかるなんてこと、そうそうないだろ?」 「・・ちゃんと、話してみます」 部活が終わり、空は茜色に染まっていた。 教科書を取りに行くと言って部室を後にした月島を追いかけるように、影山も校舎に入った。 「月島!」 丁度階段を上っている月島を下から呼び止める。 ビクンと肩を震わせこちらに背を向けたまま月島は前に行こうとした。 「おい!何で逃げんだよ・・ッ!!」 三段飛ばしで階段を駆け上がり月島の腕を掴む。 「なに」 相変わらずこちらの顔を見ようとしない月島。 自分を拒絶されているように感じて苦しくなる。 「お前、なんで俺を避けるんだよ・・!」 依然として口を開こうとしない月島に、影山は苦々しく言う。 「そんなに俺が・・嫌いかよ」 なんで、どうして。 色々な想いが頭の中を駆け巡る。 昔からそうだった。 他人の感情を読み取るのは苦手で、人がどういう風に思うか、なんて気にしたことはなかった。 しかし過去に一度、それを大きく後悔したことがある。 中学時代。 敵ブロックをかわすことに囚われて、味方の打ちやすさを考えないトスを上げ続けた。 最初はついてこようと努力してくれた仲間だが、気づけば一人になっていた。 なんで考えようとしなかったのだろう、大事な仲間だったのに。 もうこんな結末に終わるのは嫌だ。 だから、もし大事なものができたら その時はーーー ちゃんと正面から大切にしようと思ったんだ。 「ちが・・ッ!」 そう言いかけて月島はまた口を閉ざした。 手が震えているのがわかる。 「月島・・・??」 "好きだ" 「え・・」 突如聞こえてきた声に驚く。 脳に直接響き渡るように聞こえるこの感じ。 あの時と一緒だ。 影山の驚いた声に月島はハッとしたように顔を上げた 「今、読んだでしょ!!!」 顔を赤くして怒る月島に戸惑いを隠せない。 月島はもういいと言って掴まれた手を振り払った。 ぐわん と体が浮く感覚がする。 「影山!!!」 バランスを崩し落下しそうになる影山を庇うように月島が抱きかかえる。 自分が宙に浮いているのがわかった。 そのまま二人は重力に引かれるように階段から落下した。 [newpage] 真っ白な空間。 幾度となく見たこの情景で、影山は自分が夢をみているのだと察した。 確かあのとき階段から落ちて・・ そうだ!!月島は 「ここ・・どこ」 そう黒いジャージ姿の月島が呟く。 これは夢の中の月島なのか?だとすると、今までとパターンが違う。 今までは一方的に影山が話しかけるだけで、月島は何も喋らないはずなのだ。 「夢だ。 俺の」 影山に気づいたのか、ぎょっとした顔で月島がこちらを見る。 「君の・・夢?」 「ああ」 「・・確か僕、階段から落ちて・・」 今度は影山がぎょっとした。 今目の前にいる月島は、もしかして・・・ 「なあ」 「なに」 「・・お前俺のこと、その、好きなのか」 目を見開いた月島だが はあ、とため息をつき観念したかのように話しはじめた。 「・・好きだよ」 "好き" その二文字に心臓が跳ね上がるのがわかる。 「それは、どういう意味で・・」 「君って本当にバカだよね」 「誰がバカだ!」 そう噛み付き返すと、月島は頭を掻きながら「恋愛感情の方」と呟いた。 「・・気持ち悪いだろ、男を好きになるなんて。 わかってるんだ、自分でもどうかしてるって。 ・・でも、好きなんだ。 好きになっちゃったんだ、影山のこと」 誰にも話せなかった。 聞きたくない情報、他人の心を覗いている罪悪感。 自分と人は決定的に違う。 誰も本当の意味で自分をわかってなどくれない。 こんな力ならいらない。 欲しくない。 でもそんな自分の気持ちに気づいてくれる人なんていなくて。 いつか同じ能力を持つ人に巡り会えたなら、どうか・・・ この気持ちをわかって欲しい。 たすけて欲しい。 そんな淡い期待を持ち続けていた。 当たり前とでもいうように気持ちをわかってくれた人。 「俺は変わらない」と、漠然とした不安から救ってくれた人。 自覚してしまえば、恋に落ちるのなんて簡単だった。 「・・この気持ちがバレて、君が離れていくのが、怖かった。 君に感情を読み取れる能力があるかもしれないとわかったから、尚更。 だから近づかないようにしてた。 "ただの部活仲間"に戻れるまで。 」 そこまで言うと月島は両膝に顔を突っ伏した。 混乱、高揚、様々な感情が渦巻いて、影山は言葉を見つけれずにいた。 月島が能力のことを打ち明けた日。 『この際だからお前が抱えてるもん全部吐け』という半ば強引な影山の言葉につられ、最初は渋っていた月島も ぽつり、ぽつりと言葉をこぼし始めた。 月島の兄の話を聞いたのもその時である。 最近は以前より月島のことを知れたと思っていた影山だが、彼にそんな過去があったなんて知らなくて。 何もしてやれない自分がもどかしい。 月島は、影山が困ったときには必ず手を差し伸べてくれたというのに。 『だったら、ちゃんと言わないと』 菅原に言われた言葉を思い出す。 「なあ、月島。 ・・俺に昔のことはどうにもできねぇけど、これからだったら幾らでもつくっていけるんじゃねーの?」 何のことかとでも言いたげに月島はこちらを見上げる。 「俺さ、お前に避けられんの すっげー辛かった。 それくらいお前の存在が当たり前になってたんだ。 」 そう、戻ったという表現がしっくりこない程に。 このままなんて嫌だ。 もっと月島と話したい、側に居たい。 「離れていくなんて誰が決めたんだよ。 どうしてお前は抱えたまま自己完結しようとするんだよ。 」 そうやって一人でまた悩んで、苦しんで。 一人で背負い込みすぎるな。 もうお前が苦しんでた"昔"とは違うんだぞ。 「俺がお前と同じ気持ちだっていう可能性はねーの?」 黙って話を聞いていた月島が目を見開いてゆっくりこちらを見た。 信じられない。 そう思っていることが目に見えてわかる。 「ありえない・・! だって、そんな都合のいいこと・・」 「俺は!!部活仲間だからだとか、同じ能力があるからとか・・・そんな条件が無くてもお前の側に居たいんだ。 ・・お前がまた辛いときには、抱えこまねぇように俺が捌け口になってやりてぇ。 もっとお前のこと知りたいし、これからも側に居たい」 さっき彼が言った言葉に応えるように 影山は真っ直ぐに月島を見て言った。 「俺も月島が好きだ」 「・・これで夢オチとかだったら本当に笑えないよね」 そう言う月島の顔は言葉に反して幸せそうで。 ゆっくり立ち上がった後、影山に笑いかけた。 「だから、起きたらまたちゃんと言うよ。 ツンと薬品の香りが漂う室内は夕焼けで真っ赤に染まっていた。 「あら起きたのね。 どう?気分は」 白衣を着た保健室の先生がこちらに問いかける。 「うす、大丈夫です」 「月島くんは?」 「右肩がちょっと痛みますけど、それ以外は」 湿布貼るからちょっと待ってね、なんて言いながら先生はパタパタと動き回る。 「二人とも階段から落っこちたのよ~頭打って気を失ってたみたいで、えーと・・誰だったかしら?バレー部の一年生の男の子が真っ青になって職員室駆け込んできたって、体育の柳瀬先生が仰ってたわ。 先生達が担架使ってここまで運んできてくれたのよ~」 主に体育科の先生達だから、今度会ったらお礼言っておきなさい。 そう説明しながら先生は手早く月島の手当てを終わらせた。 「二人とも頭打ったみたいだから、大丈夫だとは思うけど今度ちゃんと病院に行って診てもらいなさいね」 「はい、ありがとうございました」 「ありがとうございましたッ失礼します!」 さっきまで茜色をしていた空は、今では多くが藍色で占めている。 並んで歩く二人だがどうも気まずく会話も途切れてしまう。 ちょっとくらいなら。 月島が今何を考えているのか、心の声を聞いてもいいんじゃないのか。 月島の気持ちが知りたい。 自分のせいで怪我したことを怒っているのか、自分のことをどう思っているのか。 絶えかねた影山は月島の心の声を聞こうと集中した。 「・・・・聞こえない」 「え?」 「聞こえないんだよ、心の声が」 そう、月島の声だけではない。 他の人の声も全部、聞こえないのだ。 「・・・・僕も、聞こえなくなってる」 驚きというのとはまた別の感情。 特に月島はこの力で辛い思いを沢山してきた。 その力が消えた今、嬉しさがこみ上げてくるかと思いきや、戸惑いと、少しばかり寂しさが募った。 「なんで・・・・」 影山よりも能力が発生してから年月が長い分、月島は現実を飲み込めないでいるようだ。 「月島はこの力が使えるようになる直前に、頭打ったりしなかったのか?」 「別に・・・いや、したかもしれない。 」 能力発生との原因の一つとして考えられる、後頭部の強打。 影山も脳震盪を起こしてからこの力が発生した。 「公園でバレーしてて、木にボールが引っかかって・・取ろうと登ったらボールごと下に落っこちて」 「頭を打った」 「うん」 「俺さ、色々考えたんだ。 この力が発生した原因。 前にお前が言ったこと覚えてるか?」 「覚えてるよ」 『その能力は本来人にはみんな備わってるものなんだけど、必要がないから普段は使われていない。 脳にショックを与えたことでその能力が目覚めてしまった・・とか。 あるいは何万人に一人の確立で生まれてくる能力者だとか。 神によって与えられた能力だっていう人もいる。 』 「どれが本当の原因かってずっと考えてたんだけどさ、まずそこから違ってたんだ」 首を傾げて黙って聞く月島に影山は話つづける。 「どれかとかじゃない。 全部だ」 「全部・・?」 「俺達二人とも力を使えるようになる前に頭を打ってる。 脳にショックを与えたことで能力が目覚めるって、当たってると思うんだ」 「うん」 「何万に一人の確立でっていうのはさ、元々能力を使える状態で生まれてくる人の数じゃなくて」 「・・能力に目覚める人が何万人に一人の確立でいるってこと?」 「おう。 頭を打ったヤツが全員能力者になるわけじゃないと思うんだ」 「つまり、頭を打った人間でも発生するのは何万人に一人だってことか。 なるほどね。 じゃあ三つ目は?前にも言ったよね。 僕、神云々っていうのは信じてないんだけど」 キッパリとした口調で問いかける月島。 そのことに関しては憶測でしかなかった為、影山も言うのを躊躇った。 「・・俺もこれに関してはなんとも言えねえけど、お前の兄さんの話を聞いて思ったんだ。 俺もお前も、発生する前に力を望んでるんだ」 「どういうこと?」 「もし。 相手が何を考えているのか、どう思っているのか。 気づけていたらこんな思いしなくて済んだのに。 って」 月島は何か言い返してくるかと思ったが、意外にもその説明を黙って聞いている。 「それに・・何万人に一人しか能力者がいないんだとしたら、俺とお前が会ったのも奇跡的だなって」 「へぇ~君って結構ロマンチストだね~」 「あ゛?!」 「ま、偶然が重なっただけかもしれないけど。 もし神様がいるんだとしたら、人と上手くコミュニケーションが取れない僕らにこの能力を与えてくれたのかもね」 月島はヘラヘラしながらそう言うものだから 「おい、バカにしてるだろ」と口を尖らせると「あ、わかる~?」と軽い口調でかわされてしまった。 「影山」 さっきの口調とは一変、あらたまった様子で月島は影山を呼び止める。 「君はなんのことかわからないかもしれないけど・・夢で約束しちゃったんだ。 ちゃんと言うって。 」 スーッと一呼吸おき、影山を真っ直ぐ見据えて言う。 「好きだよ、影山」 心なしか緊張しているのが窺える。 その姿がなんだかおかしくて、嬉しくて。 自然と顔がほころんだ。 「夢オチじゃなくて、悪かったな」 肩の線を硬くしていた月島だが、その言葉だけでわかった。 「俺も月島が好きだ」 辺りはもうすっかりと暗くなって、空は吸い込まれるような瑠璃色と化していた。 宮城の夜は冷える。 星が映えるその空の下、寒さを理由にこっそりと手を繋ぐ。 「ねえ影山。 確かに僕たちは人の気持ちに気づける能力を望んだ。 それがいいことだと信じて。 でも・・本当はいらないものだったんだよ。 人の気持ちなんて本当なら言わなきゃわからない。 わからないからきっとわかり合いたいって思うんだ。 」 ぬくい影山の手に、ひんやりとした月島の手。 決して早くはない歩調で、真っ直ぐ続く道を歩いていく。 「僕も君も、自分の気持ちを伝えるのが下手で 喧嘩も沢山するだろうけど。 それでもちゃんとお互いの話を聞いて、ちょっとずつ進んでいけたらいいなって思うよ。 もう声に出さないで気持ちが分かるなんてことできないんだから。 」 そうだな。 と少しだけ繋いだ手に力を込める。 なあ月島。 なんで俺達、聞こえなくなったんだと思う? 「頭をまた打ったからデショ」なんてお前は言うかもしれねぇけど、俺はそれだけじゃないと思うんだ。 もう俺達は、人の心を読まなくても 相手の気持ちをわかろうとすることができるから。 自分の気持ちを伝えることができるから。 そんなことを言ったら、お前はまた笑うかな。 瑠璃色の星空の下、真っ直ぐ続くいつもの帰り道を 二人はこっそり手を繋いだまま いつもよりゆっくりと、歩いていった。 END.

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